研究概要 |
(1)ショウジョウバエPCNA(DNAポリメラーゼdelta補助因子)遺伝子発現制御エレメントの個体レベルでの解析:PCNA遺伝子のプロモーターとその上流域を含む種々の配列をlacZ遺伝子と連結し,P-エレメント法により多数の遺伝子導入ハエを作成し,lacZ発現の変化を調べることにより、発生段階特異的な発現にとって必要な制御配列を明らかにしつつある。卵巣における発現に必須であるのは転写開始点より上流86bp以内の基本プロモーターであり、DRE(PCNAおよびDNApolymerase alpha遺伝子のプロモーター上流に存在する、共通の8bpのパリンドローム配列)はそれを増強する。初期胚での転写には、DREが必須となり、さらに幼虫期での発現には、DREおよびそのさらに上流50bpまでにある第2の調節配列が必要であることがわかった。 (2)DREに結合する転写因子DREFのcDNA及び遺伝子のクローニング:DREFをDNAラテックス粒子を利用して精製し、部分アミノ酸配列を決定し、リバースPCR法にてcDNAと遺伝子を単離した。DREFcDNAは2193bpのORFを有し、731アミノ酸残基よりなる83kDaのタンパク質を支配する。アミノ酸配列には既知のタンパク質との類似性は認められない。このタンパク質のN端約1/3は塩基性アミノ酸に富み、中央約1/3は酸性アミノ酸を多く含む。また、両者の間にはプロリンに富む短い領域が存在する。大腸菌で産生した組み換え体DREFを用いて、塩基性アミノ酸に富む領域(46-270番)がDREへの結合ドメインを含むことを証明し、発生過程におけるDREFmRNA量の変化がDNA polymerse alpha、epsilonやPCNA等の複製遺伝子のそれとほぼ一致することを見い出した。この結果はDREF遺伝子発現量の変化がDNA複製遺伝子の基本的な発現にとって重要性を持つことを示唆する。なおDREF遺伝子の染色体座位は30F〜31Aにマップされた。
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