1)プラスミド上のcrp遺伝子の転写終結領域にいくつかの制限酵素部位をPCR法により導入し、変異ターミネーター作製のための系を確立した。 2)このプラスミドの制限酵素部位と合成DNAおよびPCRを利用して、変異ターミネーターを作製した。今回はヘアピン構造のステム部分およびTのクラスターを変えた変異ターミネーターを数種構築した。 3)変異ターミネーターDNA断片をlacZおよびgalKをレポーターとする転写終結機能検定用のプラスミドにクローニングしてin vivoにおける転写終結機能を定量的に解析した。また、変異ターミネーターがcrpオペロンの発現(mRNAの安定性)に及ぼす影響を定量的に解析した。この結果、T(U)のクラスターの部分的欠失が転写終結機能を大きく低下させるが、mRNAの安定性には影響しないことが明らかになった。逆にステム部分の変異体のひとつは比較的強い転写終結能を示す一方、mRNAの安定性を顕著に下げることが判明した。これらの結果は、転写終結機能とmRNAの安定性を規定するRNA(DNA)シグナルが同一ではないことを示しており、今後の解析の糸口が得られたと考えている。 4)mRNAの3'末端には一般にポリUが検出されることからRNAポリメラーゼはターミネーター領域のTクラスター部分で転写を終結すると広く信じられているが、転写終結能の解析を行なう中で、転写ははるか下流まで進行しており、3'末端の生成はRNAのプロセシングによることを示すデータを得た。
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