1)部分的に本来のRuBisCO遺伝子を破壊した変異株は得られ、次いでゲノム遺伝子のコピーを減少させると考えられる生育の条件を検討し、完全なsegregationを試みたが満足な結果は得られなかった。現在完全変異株と部分変異株の識別をより明確にするPCRの条件、及びゲノムのコピー数を減少させる条件について再検討中である。 2)ラン藻本来のRuBisCOと形質導入したRuBisCOを共に発現している部分変異株について、RuBiSCOの細胞内分布および光合成炭素代謝特性を解析した。Price&Badgerの方法でカルボキシゾームを単離し、シトソールとカルボキシゾームのRuBisCOについてChromatium RuBisCOの抗体を用いてカエスタン分析を行った。ほとんどがシトソールに局在し、従ってL8S8構造を持つ外来のRuBisCOCもカルボキシゾーム組み込まれない事が判明した。ChromatiumRuBisCOが導入されたことで、CO_2濃縮機構の誘導の抑制、CO_2濃縮が不必要になることによる光合成量子収率の上昇は顕著では無かった。 3)炭素ガスの吸収で測定する限りでは、ChromatiumRuBisCOにより形質転換したラン藻と野生株のラン藻でその濃縮機構に差は見られなかった。そこで濃縮機構を再検討すると、リチウムイオンのナトリウムイオンが存在すると見かけ上溶存炭酸ガスの濃縮を促進する事が判明した。また酸素発生で確認した光合成は阻害するが、溶存炭酸ガスの濃縮は阻害しないナトリウムポンプの阻害剤も新しく見つかった。それを用いた結果も考え合わせると、無機炭酸の濃縮には、光により形成される細胞内外のpH格差がCO_2とHCO_3^-の平衡を変化させることの寄与があると考えられる。このことは分子生物学的手法で無機炭酸の濃縮機構を検討する際、高い無機炭酸濃度でのみ育ち得る変異種の重要性と共に、0.1%炭酸ガスで育ち得る変異種の重要性を示唆している。
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