系II還元側:約10種類の電子伝達阻害剤について、その光傷害に対する効果を調べた。DCMUまたは、Atrazineの添加により光傷害による光化学系II電子伝達活性阻害の抑制が見られた。しかし、その他の大部分の電子伝達阻害剤は光傷害に対して、むしろ促進効果を示した。一方、活性酸素消去剤である、ヒスチジン、DABCO、Propyl Gallate、カタラーゼ、SODが存在しても光傷害にはほとんど影響を与えなかった。 DCMUはpH6.5でトリプシン処理した系II膜では光傷害抑制効果を示さなかった。この結果は光傷害を抑制する為に、DCMUはQ_B-サイトへ結合している必要である事を示していた。また、抑制効果は好気条件下での光傷害に対する場合よりも大きかった。以上の結果より、DCMU、Atrazineが示す光傷害による活性阻害に対する保護効果は、Q_B-サイトに結合したこれらの阻害剤がQ_Aに直接影響する事によりQ_Aの機能阻害を抑制する事によると推定した。 系II酸化側:Mn-クラスターを失った光化学系II酸化側における、光傷害部位の1つである熱発光A_T-バンド成分の損傷機構について検討した。強光照射によるA_T-バンド阻害はDCMUにより著しく抑制された。A_T-バンド阻害には酸素の存在が必要であり、嫌気条件下では阻害が起こらなかった。SODは強光照射によるA_T-バンド阻害に対しても抑制効果を示したが、その程度は弱光阻害の場合と比較して小さかった。以上の結果は系II酸化側の光傷害過程にO_2^-が重要な役割をはたしている事を示唆している。O_2^-はQ_B-サイトにおいて^3O_2が1電子還元を受けて生成する、とすると実験結果を矛盾なく説明できる。
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