研究課題
本研究は視野内の対象の連続性、特に色情報の連続性が、一次視覚野(V1)でどのように表現されているのかを光学計測法(optical recording)ならびに電気生理学的計測法を併用することにより明らかにしようとするものである。本年度は、光学計測実験としてネコおよびラットにおける予備実験を行い、電気刺激に対する神経細胞の活動を可視化することに成功した。現在、光刺激に対する反応の計測を行っている。また電気生理学実験としてニホンザルブロッブニューロンの色選択性を形成する入力メカニズムについての解析を行った。麻酔・非動化したニホンザルV1より記録した21個の色選択性ブロッブニューロンについて、その入力メカニズムを調べるために皮質内抑制系の担い手であるGABAのA型受容体拮抗薬であるbicuculline methiodide(BMI)のイオン泳動投与中の色刺激応答をコントロール時のそれと比較した。その結果、検討した色選択性細胞全てにおいて、複数種類の錐体系入力がオン、オフそれぞれの反応時に与えられており、皮質内抑制が、特定の色刺激に対するチューニングをシャープにする機能を果たしていることが明らかになった。このような色選択性細胞において、受容野のみならず視野の広い範囲に及ぶ色刺激を提示した場合にも上記の観察と同様の結果が得られた。現実の生活における視覚刺激は通常色コントラストのみならず、明るさのコントラストも伴う。また色収差情報も形状認知に寄与していると考えられる。今後は、これらの要素を組み合わせた刺激を用いて光学計測を行い、色情報処理から見た視野統合のありかたを検討したい。
すべて その他
すべて 文献書誌 (1件)