研究概要 |
以下の2項目について研究を行った。 1.抑制性シナプス長期増強へのCa^<++>/calmodulin-dependent protein kinase II(CaM-KII)およびprotein kinase A(PKA)の関与について検討した。ラット小脳スライスのプルキンエ細胞からホールセル記録を行い、シナプス後電流(IPSC)およびGABA(2-5muM)による電流をモニターした。脱分極パルス(持続500ms,-60mVから0mV)によりIPSCおよびGABA電流が増強し40分以上持続した。この長期増強は、プロテインキナーゼ阻害剤のstaurosporine、カルモジュリン阻害剤のcalmidazolium(CZ)、CaM-KII阻害剤のKN-62によって阻害された。しかし、脱分極パルスを与えてから5分後にCZおよびKN-62投与を開始した細胞群では長期増強がみられた。これらは、カルモジュリンによるCaM-KIIの活性化が長期増強の誘発に必要であり、この過程は脱分極パルスによるCa^<++>上昇の5分以内に終了することを示す。また長期増強の維持にはCa^<++>およびカルモジユリンに依存しない機構が関与することを意味する。なお、以上の薬物によって電位依存性Ca^<++>電流やシナプス伝達は影響されなかった。一方、PKA阻害剤のprotein kinase inhibitor peptide(PKIP)を細胞内に与えても長期増強をブロックできなかった。 2.抑制性シナプス長期増強の誘発には、シナプス後細胞の脱分極による細胞内Ca^<++>濃度上昇と抑制性介在ニューロンの活動が同時に起こることが必要であることを明らかにした。この事実は、抑制性シナプスの可塑性もHebbの法則に従うことを示すもので、興奮性シナプスの長期抑圧とともに、抑制性シナプスの長期増強が小脳の運動学習に関与することを強く示唆するものである。
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