大腸菌OxyR蛋白は、細胞が酸化ストレスにさらされた時に発現する遺伝子群の転写活性化蛋白である。この研究では、OxyR蛋白の持つストレスセンサー、特異的DNA結合能、RNAポリメラーゼとの相互作用などの諸機能が、蛋白内のどの部分によって担われているかを分子遺伝学的手法により明かにすること、及び、OxyR蛋白により発現の調節される遺伝子のうち、未同定のものについて、それをクローン化し構造解析を行うことにより、酸化ストレス応答のうちOxyR応答の全体像を明かにすることを目指している。今年度は、次のような結果が得られた。 1)OxyR蛋白が相互作用すると考えられるRNAポリメラーゼ上の部位の同定を行うため、OxyR蛋白による転写活性化に欠損を持つRNAポリメラーゼの変異体を得ることを試み、そのような性質を示す変異体を18クローン得た。変異部位の同定、変異蛋白による試験管内の実験の結果、OxyR蛋白は、RNAポリメラーゼのαサブユニットのC末端に近い部位のうち、2ヶ所と物理的に接触していることを示す証拠が得られた。 2)1)で得られたRNAポリメラーゼ変異をサプレスするoxyR遺伝子の変異を同定することにより、RNAポリメラーゼと相互作用するOxyR蛋白内の部位の同定を行うため、oxyR遺伝子にランダムに変異を導入したライブラリーを作成した。現在、これを用いて、oxyR変異株のスクリーニングを行っている。 3)OxyR蛋白により発現の調節される遺伝子を修種クローン化した。そのうちのいくつかについては構造解析を行った。現在引き続き残りのクローン構造解析、それらの遺伝子を欠損する変異株の作成などの作業を行っている。
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