本研究では、高等植物における熱ストレス応答の研究を、熱ショックタンパク質遺伝子の発現調節という観点から研究している。材料として、生活環が短く、植物体が小さく、DNA含有量・遺伝子重複の少ない、アブラナ科のシロイヌナズナを採用する。 本年度は、以下のような新たな知見を加えることができた。 1)HSP90遺伝子ファミリーの構成員を更にもう一種同定した。この遺伝子は既に単離した遺伝子の近傍に存在した。 2)HSP90ファミリー遺伝子の詳細な発現解析をNorthern法、レポーター遺伝子=トランスジェニック・植物を用いる方法、により解析した。その結果、1つの熱ショック誘導性遺伝子と、DNA配列では相同性を持つあと2つの構成性発現遺伝子を同定するに至った。構成性発現遺伝子は、分裂組織などの器官・組織特異的な(レポーター遺伝子活性でみた)発現を示すことを見いだした。 3)HSP90ファミリー遺伝子の発現を更にin situで観察し、mRNAの器官特異的発現の確認を行なった。これらの知見を更に発展させるために、現在、a)HSP90ファミリー遺伝子の発現を制御する遺伝子の同定・単離、b)融合遺伝子のレポーター活性を指標に遺伝子発現に関する調節変異体をトランスジェニック植物から単離、を目指しており、年度内に更に成果を得るつもりである。
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