アクチン結合蛋白質コフィリンのアクチン結合様式の分子機構の解明のために、我々が同定したコフィリンのアクチン結合部位に相当する領域(12アミノ酸残基配列)の合成ペプチドを作製し、その合成ペプチドの解析を行った。その合成ペプチドは、アクチンと結合するとともにイノシトールリン脂質であるPIP2とも結合する。この合成ペプチドのNMRによる解析を行ったところ、このペプチド自体は溶液中で特定のコンフォメーションをとらないが、アクチンと結合するとある特定のコンフォメーションをとることがわかった。また、PIP2と結合した場合も同様の変化が起こること、アクチンとの結合様式とPIP2との結合様式は非常に似ていることなども明らかとなった。 コフィリンはin vivoにおいてセリン残基がリン酸化されているが、そのリン酸化を担う蛋白質キナーゼを同定するために、大腸菌にコフィリンを発現させ、その組換えコフィリンを基質にして、細胞抽出液中にコフィリンリン酸化活性の検出を試みた。その結果、種々の細胞抽出液中に見かけ上のコフィリンキナーゼ活性が見い出された。大量に調整が可能なXenopus卵抽出液を用いて、分画・精製を進めようとしている。コフィリンの脱リン酸化を担うホスファターゼについては、キナーゼの同定後に行うつもりであったため、検索が行えなかった。今後、コフィリンキナーゼとコフィリンホスファターゼの同定を進め、両分子のストレス応答機構およびコフィリンのリン酸化、脱リン酸化による機能制御についてさらに解析を進める必要がある。
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