90kDaストレスタンパク質(HSP90)の機能を明らかにする目的でヒトHSP90をグルタチオン-S-トランスフェラーゼ融合タンパク質として大腸菌で発現した。全732アミノ酸残基のHSP90alphaの全長、およびN末端側、C末端側、さらに、ダイマーを形成するHSP90alphaとモノマーで存在するHSP90betaのキメラ分子を発現し、ダイマー形成能を比較した結果、アミノ酸残基313残基以降にダイマー形成能が存在したいた。 私たちは、以前にHSP90の解離によりグルココルチコイドレセプターのステロイド結合親和性が1/100に低下する現象を見い出し、HSP90が、それまで知られていたステロイドレセプターのDNA結合活性の抑制だけでなく、高親和性のステロイド結合に不可欠の因子であると報告した。今回はさらに、ステロイドレセプターに結合するHSP90の機能の普遍性を明らかにするために、ヒトミネラルコルチコイドレセプタコを大腸菌およびin vitroで発現してその性質を比較した。その結果、ミネラルルチコイドレセプターはHSP90を結合した状態でのみ、高親和性のステロイド結合を保ちえた。またDNA結合活性はグルココルチコイドレセプターやアンドロゲンレセプターと同様HSP90の結合により阻害された。 精製エストロゲンレセプターと前述の大腸菌発現HSP90alphaとを用いたin vitroの複合体再構成実験により、HSP90のレセプター結合領域もN末端より313アミノ酸残基以降に存在することが判明した。 これらの結果から、HSP90はステロイドレセプターファミリーに共通に働き、DNA結合能とステロイド結合能に二重に作用する調節因子であることが判明した。まだHSP90のダイマー形成がステロイドレセプターとの結合に必須かどうかについては検討中でありまだ決定的な結果は得られていない。
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