研究概要 |
ニワトリの細胞核内で最大のヘテロクロマチンであるW染色体(雌特有の性染色体)の形成するWヘテロクロマチンの分子構築と細胞周期における変動を解析した。先ず、W染色体DNAの約65%を占める高度湾曲性を示すXhoI-,EcoRIファミリー反復配列がWヘテクロマチンの構成成分であることを蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)により示した。ニワトリのMSB1の細胞の同調培養に経時的にブロモデオキシウリジン(BrdU)を取り込ませ、W染色体DNAの複製時期を、抗BrdU抗体の反応とXhoIファミリーDNAをプローブとするFISHによるW染色体の同定を組み合わせて調べた。その結果、W染色体DNAはS期のピークより約1時間遅れて複製されることが分かった。一方、MSB1細胞の単離核をマイクロコッカルヌクレアーゼ(MNase)消化し、DNAを抽出、サザンブロットを行なった結果、XhoI-,EcoRIファミリー配列ともヌクレオソーム構造を形成しているが、リンカーDNA鎖長がゲノム全体のクロマチンの平均値より約20bp長いことが示され、リンカー部分への非ヒストンタンパク質の結合が示唆された。MSB1細胞の単離核をMNase消化したのち、低塩濃度下でクロマチンを可溶化し、50mM NaC1 沈殿、HW65-s ゲル濾過カラムにより XhoI ファミリーを含むクロマチンを約10倍濃縮した。この濃縮画分に含まれるタンパク質に対して、XhoI ファミリー配列をプローブとするサウスウエスタン法を行なって、DNA結合タンパク質を検索した。その結果、170〜37kDaの15種類の結合タンパク質の存在が認められた。これらのタンパク質について、XhoIファミリーへの結合の高親和性、ヌクレオソームの2量体以上へ結合する性質、S期後期以降にクロマチン中の存在量が減少することなどの性質を備えている成分を検索した。現在、その様な性質を示す58、62、69、83kDaの成分に着目して、それらの精製を進めている。
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