アカパンカビcDNAライブラリーからクローニングされたkrev-1遺伝子は225のアミノ酸をコードしておりras-superfamilyに特徴的な機能ドメインを含んでいた。他の生物のkrev-1タンパク質とは50から60%の相同性を示した。ゲノムDNA中には7個のイントロンを含み翻訳開始部位にはKOZAKのコンセンサスが見られ、それよりさらに約300base上流から転写が始まっていた。RFLPマッピングをおこなったところ、この遺伝子は第1染色体のnit-2遺伝子に強く連鎖していた。栄養増殖過程ではkrev-1遺伝子は常に発現していた。この遺伝子のアカパンカビにおける機能を調べるため、RIP(repeat induced pointmutation)実験を行った。この結果、増殖、菌糸の形態など多方面に異常を示す株が得られたが、遺伝的な解析やサザンハイブリダイゼーションなどの結果は、この異常がkrev-1遺伝子以外のkrev-1遺伝子に構造上類似の遺伝子におきた突然変異に起因していることを示した。一方、krev-1遺伝子に変異を持つことが確認された株ではこれまでのところ表現型の異常は見られていない。以上の結果から、アカパンカビにはkrev-1遺伝子と類似の遺伝子が存在し、重複した機能をもつことが予想される。
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