1.血液系腫瘍細胞におけるサイクリンの発現:24種の細胞株および少数例の血液患者腫瘍細胞で、D型サイクリンについてノーザン解析を行ったところ、サイクリンD3の発現は常に検出された。一方、サイクリンD1とD2は、細胞ごとにそれらの発現の有無が異なり、多能性血液幹細胞から種々の系統に分化・増殖する際に、系統特異的もしくは分化段階特異的に発現制御を受けている可能性が示された。2.血液系細胞の分化モデルにおけるサイクリンの発現:巨核球系細胞株MegO1s細胞では、細胞周期同調後、細胞周期依存性発現が、サイクリンA、B1、Eには見られ、サイクリンC、D1、D2、D3には、見られなかった。一方、TPAによる分化誘導刺激(増殖抑制刺激でもある)によって、サイクリンA、B1、Cについては、発現抑制が見られるものの、サイクリンD1、D2、D3、Eについては、発現レベルに大きな変化は見られなかった。G1-S移行期にサイクリンEが発現した後、分化誘導刺激のシグナルが作用し、サイクリンA、B1、Cの発現が抑制されることが示唆された。3.正常造血組織におけるサイクリンの発現:in situ hybridizationの系を確立するため、ヒストンH4遺伝子をプローベとして、シグナル検出の条件設定を行なっている。今後正常細胞の検討を始める。4.D型サイクリン蛋白の発現:現在、A.Arnoldの研究室より、サイクリンD1に対するモノクローナル抗体を入手したところである。5.ラット胎児線維芽細胞を用いたフォーカス形成アッセイで、サイクリンD1が腫瘍原性を持つ可能性を見いだした。
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