分裂酵母の変異株を宿主とした異種生物間遺伝子相補クローニング法を用いて、動物細胞のG2期制御遺伝子の単離、解析を行なっている。本年度は、1)3種類のヒトcdc25遺伝子のうち、cdc25A、2)分裂酵母のweel変異株を相補する新たなヒト遺伝子(minl)について研究した。 1)ヒトcdc25Aは、cdc25BやCと異なりその発現がG1/S期で見られることから、この時期で機能している可能性が考えられる。そこで、同調培養したNRK細胞にcdc25Aの特異抗体を微量注入し、細胞がM期へ進入するか否かを調べた結果、ほとんどの細胞がM期へ進入していないことがわかった。次に、坑cdc25A抗体を注入した細胞が、細胞周期のどの時期で停止しているかをレーザー顕微鏡を用いたフローサイトメトリーで検討した結果、約76%の細胞がG1期で停止していることが判明した。 2)weel変異株を相補する新たなヒト遺伝子minlを単離した。この遺伝子産物は分子量130KDの蛋白質で、その発現は、G2/M期で最高に達する。分裂酵母の種々の変異株を用いた解析結果から、リン酸化を介しないcdc2キナーゼの新たな抑制因子であることがわかった。このcdc2キナーゼの抑制活性は、minl遺伝子産物の約半分のC末端領域に存在する。更に、ある種の癌細胞で、翻訳停止の点変異が存在し、その発現量は、正常細胞に比べて顕著に低下していることが明らかとなった。
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