研究概要 |
1)細胞周期のG1期からS期への進行が高温で阻止されるtsBN462株で、CCG1遺伝子の変異が起こっているか調べるために野生型BHK21株と変異型tsBN462株よりCCG1遺伝子を分離し塩基配列を決定した。 その結果ひとつのアミノ酸の変換が見いだされた。また、CCG1遺伝子のエキソン、イントロンの構造を決定した。1993年に入って、CCG1遺伝子が転写因子複合体TFIIDの一つの構成成分TAF250であることがわかった。tsBN462株における細胞周期依存性遺伝子の発現を見た結果、G1/S境界領域で発現されているサイクリンA,B1,cdc2,cdc25などの遺伝子群の転写誘導が見られなく、特にサイクリンA,B1,cdc25については、蛋白質レベルでの誘導も検出できなかった。それに対して、G1期初期に発現が見られるc-fos,c-jun,c-mycなどの発現は見られた。そこで、CCG1遺伝子の変異による転写レベルの調節は、遺伝子によって異なることがわかった。また、tsBN462株は、非許容温度下だけでなく許容温度でも低血清下ではアポトーシスをおこすことを見いだした。このことは、CCG1遺伝子の変異にによりアポトーシスを抑制している遺伝子の発現が下がっていることをしさする。 2)tsBN462株と同様に高温でアポトーシスをおこすtsBN7株の変異を相補する遺伝子DAD1を分離した。DAD1遺伝子は、分子量12kDaの疎水性残基にとんでおり高温にするとタンパク質が消失した。 3)ハムスターのcdk2を分離したところ、別の分子量をもつcdk2Lを分離した。大腸菌で作成したcdk2Lタンパク質は、サイクリンEに結合できるが、ヒストンH1キナーゼ活性を持っていなかった。一方、cdk2タンパク質は、サイクリンEに結合できてヒストンH1キナーゼ活性を持っていた。そこで、cdk2Lは、細胞の増殖にネガティブに作用する可能性がある。
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