研究課題/領域番号 |
05271101
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研究機関 | 理化学研究所 |
研究代表者 |
宇井 理生 理化学研究所, 宇井特別研究室, 特別招聘研究員 (50001037)
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研究分担者 |
高井 義美 神戸大学, 医学部, 教授 (60093514)
日高 弘義 名古屋大学, 医学部, 教授 (80100171)
野沢 義則 岐阜大学, 医学部, 教授 (10021362)
堅田 利明 東京大学, 薬学部, 教授 (10088859)
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キーワード | 3量体G蛋白質 / ras蛋白質ファミリー / 細胞増殖因子 / PI-3-キナーゼ / チロシンキナーゼ / インシュリン / 活性酸素生成 / 走化性ペプチド |
研究概要 |
情報転換因子としてのGTP結合蛋白質は、3量体G蛋白質(以下単にG蛋白質)と低分子量で単量体のras蛋白質スーパーファミリーに分類される。元来rasはG蛋白質が介在しない細胞増殖因子受容体の下流に存在するとされており、従って、この2種のGTP結合蛋白質ファミリーは互いに異る細胞情報伝達系に属すると考えられてきた。本研究の本年度の成果は、この2種のファミリーが同一の情報伝達系で相互作用を行っていることを証明したことである。この証明は、好中球においてG蛋白質を介するfMLP受容体刺激に対する活性酸素生成応答が、真菌代謝産物ワートマニンによって特異的に抑制されることの発見に始まる。詳細な検討の結果、ワートマニンはrasの直ぐ上流に存在するPI-3-キナーゼを特異的に阻害することによってこの応答を抑えることが示された。PI-3-キナーゼはもともと細胞増殖因子受容体刺激が活性化する蛋白質チロシンキナーゼの産生物リン酸化チロシンに会合して活性化される。好中球においては、「fMLP受容体→G蛋白質→リン酸化チロシンによるPI-3-キナーゼ活性化→rac(rasファミリーの一員)→活性酸素生成」と情報が伝えられることが証明された。近年、久しく不明だったrasの上流と下流のシグナルカスケードが急速に同定されつつある。PI-3-キナーゼはrasの上流に位置すると考えられるが、このカスケード内で占める正確な位置は不定のままである。特異的阻害薬ワートマニンは、この系におけるG蛋白質の役割を初めて明確に示したばかりでなく、今後PI-3-キナーゼの細胞内シグナルとしての位置づけの解明に貢献することが期待される。事実、本研究はさらにインシュリン受容体刺激から糖代謝活性化に至る情報もPI-3-キナーゼを介して伝達されることを、ワートマニンを用いて証明した。
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