研究課題/領域番号 |
05271202
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
赤池 紀生 九州大学, 医学部, 教授 (30040182)
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研究分担者 |
原田 伸透 九州大学, 医学部, 助手
尾野 恭一 九州大学, 医学部, 助手 (70185635)
松田 博子 九州大学, 医学部, 助教授 (10181736)
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キーワード | G蛋白質 / 単離中枢神経細胞 / イオンチャンネル / ニスタチン法 / ニューロトランスミッター / パッチクランプ |
研究概要 |
GTPやセカンドメッセンジャーなど細胞内容物が電極内に拡散しない新しいホールセン様式パッチクランプ法であるニスタチン法を用いて、近年記憶・学習と強い関連があるとされている代謝型グルタミン酸応答を解析した。幼若ラットより急性単離した海馬CA1の錐体細胞において、1.膜電位固定化にグルタミン酸を投与すると外向き電流が惹起されること、2.この外向き電流が百日咳毒素非感受性のG蛋白質を介していること、3.G蛋白の活性化に引続きフォスホリパーゼCを介してイノシトール3リン酸(IP3)が合成されること、4.IP3濃度の上昇に伴いIP3感受性(IICR)細胞内Ca2_+ストアからCa2_+が放出されること、5.Ca2_+の放出にCa2_+感受性(CICR)細胞内Ca2_+ストアも関与していること、6.放出されたCa2_+がアパミン、イベリオトキシン非感受性のCa2_+依存性K_+チャンネルを開口することを明らかにした。 さらに急性単離肝細胞にもニスタチン法を適用し、細胞外ATPがP2Y型プリンレセプターを介してK_+チャンネルを開口することを見いだした。この応答も海馬の代謝型グルタミン酸応答と同様に、百日咳毒素非感受性のG蛋白質を介しており、G蛋白質から下流の情報伝達路も酷似していたが、ヘパリン非感受性のIICRが関与し、K_+チャンネルがアパミンにより阻害されるなど、いくつかの差異も認められた。 G蛋白質を介した一連の細胞内情報伝達路が電気生理学的に詳細に解析された例は国内外を通じても数少なく、本研究は極めて意義深いものと確信している。また生化学的に体細胞に広く分布が認められているG蛋白質が、脳神経細胞や肝細胞など種々の細胞でのトランスミッター、ホルモンを介した応答の基礎を担っていることが明かとなった。これらの生理学的意味付けも含めて、今後の研究の課題となろう。
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