1.WEHI-231細胞のアポトーシスに対するLynキナーゼの関与について知る為に、IPTGの添加により発現が抑制されるオペレーター・プロモーターの下流に活性化型lyn cDNAを組み込んだ。しかしながら、IPTG添加のみのWEHI-231細胞に対する影響を調べたところ弱いながらも増殖阻害活性のあることが判明し、現在至適条件の検討を行っている。また、WEHI-231細胞に無害と思われるテトラサイクリンにより発現抑制の可能な系も併せて検討している。 2.野性型・活性化型lyn cDNAを免疫グロブリンエンハンサー、SV40プロモーターの制御下で発現するトランスジェニックマウスに関しては、一部にウイルスの感染が認められた為、帝王切開によるSPF化を行い、少なくとも一系統ずつのSPFトランスジェニックマウスを樹立し解析を続けている。 3.lyn遺伝子欠損マウス樹立の為にマウスlyn遺伝子の単離を行ったところ、ゲノム上のlyn遺伝子に対応する領域として、塩基配列上極めて相同性の高い二つの領域が見い出された。また、両領域を識別し得るプライマーを用いてB細胞のhnRNAに対するRT-PCRを行い、転写活性のあるlyn遺伝子を同定した。すでに、lyn遺伝子のエクソン2-4を含むゲノムDNAを用いて遺伝子破壊ベクターを構築し、ES細胞に導入している。 4.B細胞受容体刺激直後にチロシンリン酸化される蛋白質の同定に関しては、6.4×10^9個のヒトDaudi B細胞から抗フォスフォチロシン抗体を用いて精製された75kd蛋白質の部分アミノ酸配列を決定し、血球系細胞特異的に発現する細胞内蛋白質HS1がB細胞受容体刺激直後に最も強くチロシンリン酸化される分子であることを発見した。
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