研究概要 |
静止期マクロファージによる抗原提示は、クラスIIMHC拘束性T細胞アネルギーを誘導する 抗原提示を受けた際のT細胞反応様式は、アプリオリに決まっているのではなくて、抗原提供細胞の種類や抗原量さらには微細環境で産生されている調節性サイトカイン(IFN-gamma、IL-4,IL-10,IL-12,IL-13等)により影響を受けると言われている。これらの個々の因子をそれぞれ検討することは、人為的に免疫応答を調節するための方法論を構築する上で重要である。本研究では、抗原提供細胞の種類をトランスジェニックテクノロジーを用いてマクロファージに限定し、マクロファージ抗原提示の効果を検討した。 c-fmsプロモーターを用いてアロクラス〓MHC遺伝子Ealpha^dを発現させたTgマウスを作成した。このTgマウスでは、Ealpha^d:Ebeta^bハイブリッド分子がマクロファージ特異的に、かつ正常クラスIIMHC同様の密度で発現した。「ハイブリッドE分子+ペプチド抗原DASp」に特異的なThクローンを作成して検討したところ、マクロファージの抗原提示能は樹状細胞の1/100-1/300程度であった。ナイーブT細胞に対するDASp抗原提示能を放射線骨髄キメラマウスを作成して検討したところ、マクロファージはヘルパーT細胞を感作できないことが判明した。このようにマクロファージは、クラスIIMHCに拘束されたT細胞応答をポジティブに動かす能力に欠けていたが、以下の検討からネガティブに調節する能力-寛容導入能を持つことが分った。TgマウスのT細胞は、Ealpha^d:Ebeta^bハイブリッド分子に対して免疫寛容になっていた。また、E分子によって抗原提示される内因性スーパー抗原に対しても寛容になっていた。この寛容状態は、内因性スーパー抗原に反応性を持つTCRVbeta5,Vbeta11,Vbeta17a陽性細胞のクローン除去を伴わないこと、抑制活性が認められないことより、アナジー状態であることが判明した。 今後このTgマウスをc-fos Tg等の他のTgマウスとかけ合せて、アナジーの機序を検討する。また、スーパー抗原により誘導されるアナジー機序との異同を検討する。
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