1.胸腺内での臓器抗原の発現による寛容導入機構の解析。 ヌードマウスの腎皮膜下にラットの胎仔胸腺を移植しておく(TGヌードマウス)と同マウスには多発性に自己免疫病が自然発症する。TGXヌードマウスの移植ラット胸腺内に自己免疫病の標的臓器を移植しておく(TGヌードマウス)と、自己免疫病の発症が完全に予防できる。TGXマウスを臓器抗原で強化免疫すると対応臓器に自己免疫病が発症した。TGXヌードマウスに臓器炎が発症しないのは対応するT細胞のdeletionの他にT細胞が末梢でanergyとなっていることが示唆された。 2.サプレッサーTリンパ球の活性化の場の検討。 生後3日胸腺摘出(Tx-3)B6AF1マウスには自己免疫性前立腺炎が70%に発症する。出生当日に去勢(Orx-0)すると、前立腺の発育が抑制される。Orx-0+Tx-3マウスには前立腺炎は発症しないが、同マウスに男性ホルモン(DHT)を投与すると前立腺が成熟し、やがて自己免疫病が発症する。一方、Orx-0マウスの胸腺を6週齢で摘出(Tx-A)し、本マウスにDHTを投与し、前立腺の発育を促す。同マウスにとっては前立腺抗原は未知の抗原であるが、成熟前立腺には自己免疫病が発症しない。この寛容がサプレッサーTリンパ球によるのか、anergyなのかを明らかにするために、Orx-0+Tx-A+DHTマウスの脾Tリンパ球をTx-3マウスに注射して前立腺炎の予防効果を検討した。予防効果がなければanergyと考えられ、サプレッサーTリンパ球が活性化するのは胸腺となる。効果があればサプレッサーTリンパ球によることになり、この細胞群が活性化するのは末梢のリンパ臓器となる。実験の結果後の考えが立証された。
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