研究概要 |
Hox遺伝子群はショウジョウバエAntp遺伝子群に構造が類似した遺伝子としてクローン化された哺乳類ホメオボックス遺伝子群であり、その構造および発現パターンから、哺乳類の発生過程をコントロールしている遺伝子群だと考えられている。本研究の目的は、Hox遺伝子群が、いつ、どこで、どのような遺伝子の発現を、どのようなメカニズムによってコントロールしているかを明らかにすることである。具体的には、Hox遺伝子産物が生体内で発現を制御している遺伝子(標的遺伝子)をクローン化し、その遺伝子の発現が、Hox遺伝子産物および他の転写因子によってどのようにコントロールされているかを、培養細胞およびHoxターゲットマウスを用いた個体レベルでの実験によって明らかにすることである。平成5年度は、転写因子の抗体を用いた標的遺伝子クローン化の方法を開発し、Hox C8および、Hox C4遺伝子のマウス生体内での標的遺伝子をいくつかクローン化した。Hox C8遺伝子のマウス脊髄における標的遺伝子としてクローン化した遺伝子には、Hox A7遺伝子およびショウジョウバエがん抑制遺伝子1(2)glのマウスホモログと考えられる遺伝子(mgl-1)が含まれていた。in situハイブリダイゼーションによって、マウス発生過程におけるHox C8とmgl-1遺伝子の発現パターンを比較した結果、両者の発現領域は、脊髄および椎体において相補的であったことから、Hox C8はmgl-1の発現を抑制していると考えられる。またHox C4遺伝子のマウス胎児における標的遺伝子としてクローン化した遺伝子の内2つについては、遺伝子の部分構造および胎児での発現パターンを明らかにした。Hoxターゲットマウスについては、Hox C4,Hox C8,Hox C9について準備が整いつつあり、これらのマウス中での標的遺伝子の発現パターンを明らかにする予定である。
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