研究概要 |
タンパク質をコードする遺伝子はPolIIにより転写されているが、その転写量は種々のDNA結合能を持つ転写調節因子により調節されている。これら転写因子の標的はTBPであるが、TBPは直接活性化シグナルを持け取らず、TAFと呼ばれる因子が、そのシグナルを伝達する。TAFは発生・分化・増殖というような様々な生命活動にかかわる転写調節に深く関与すると考えられ、本研究においては、動物個体組織からTAFを得る新たな実験系の確立を目ざした。 マウスTBPのN端にヒスチジンのタグを付けたものを大腸菌で大量発現させ、Ni-アガロースで純品に精製した。別にラットの肝臓より核抽出液を大量に調製した。ヒスチジンタグ付TBP(HXmTBP)と核抽出液を混合し、これをNi-agaroseを通す事によりHXmTBPに結合する核内タンパク質(TBP結合性蛋白質:TIPs)をSDS-PAGEで検出した。その結果、核抽出液には多数のTIPsが含まれている事が明らかになった。抗マウスTBP抗体を用いて核抽出液内のTFIID複合体を解析したところ、TIPsのかなりのものはTAFとして分類される因子と同一である事が考えられた。このTIPsを得る時、熱処理を行なうと、かなりのTIPsは消失するが、残る分子も存在し、TIPsの中には、TBPに直接あるいは間接に様々な強さで結合するものが存在する事が明らかになった。肝以外に脳や腎,精巣などの核抽出液中のTIPsを解析したところ、「組織特異的」あるいは「増殖特異的」TIPsの存在が示唆された。
|