研究概要 |
核内受容体による転写制御を分子レベルで明らかにする目的で以下の2点に絞り研究を進めた。 1.核内受容体標的エンハンサー配列認識の特異性と非特異性 我々はすでに従来より知られてきたコンセンサスエストロゲン応答配列(ERE)とは全く異なるタイプのERE(OV-ERE)が、主要卵白タンパクであるオバルブミン遺伝子プロモーターに存在することを証明した。OV-EREでは多くの核内受容体の標的結合部位であるAGGTCAモチーフが計4個互いに100bp以上も離れて存在していた。そこで、ERのOV-ERE認識の特異性を検討する目的で、2個のAGGTCAモチーフ間のスペースが離れた配列への各核内受容体(VDR,TR,RAR,RXR)の標的特異性を調べた。その結果、2つのモチーフ間のスペースが狭い場合には標的特異性が現れるのに対し、スペースが広い(10bp)場合には、特異性が消失することを見出した。また、この際、DNAに高次構造の変化が生じることも見出している。 2.核内受容体群の発現調節 レチノイド受容体(RAR,RXR)遺伝子群の発現に及ぼすビタミンA、ビタミンD、甲状腺ホルモンの効果を調べた結果、RXRbetaは正、RXRgammaは負に甲状腺ホルモンによって制御されることを見出した。このことは、核内受容体遺伝子自身の発現が関連するリガンドによって制御される複雑なネットワークが存在することを示したものである。
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