研究概要 |
本研究班は、糖鎖及び糖鎖複合体の解析・分子設計及び再構成に関する研究を遂行し、平成6年度には以下の成果を得た。稲垣はaFGFとヘパリンの相互作用の解析を目的として、aFGFの^<13>C/^<15>Nの均一同位体ラベル体を調製した。主鎖の帰属がHN(CO)CA,HNCA,CBCA(CO)NH,CBCANH等の三重共鳴三次元NMRの測定パルスを作成することで一義的に可能になった。さらにC(CO)NH,HCCH-TOCSYの測定により、側鎖のシグナルについてもほぼ帰属を完了することができた。また、構造解析システムを多次元NMRに拡張する為の修正を行うと共に、ヘパリンの認識に関与するaFGFの残基をマップした。長谷川は細胞接着因子(セレクチン)の糖鎖リガンドであるsLe^X及びsLe^aの構造要求性を計算化学的及び有機化学的手法により追求した結果、シアル酸、ガラクトース、フコース、N-アセチルグルコサミンの各部位の立体構造、側鎖構造の活性への影響を明らかにした。さらに、GQ1b及びGQ1bαの全合成を完了すると共に、免疫抑制活性を有するシアロ複合糖質のデザイン合成にも知見を得ている。隅田はBiological Response Modifier作用が報告されたEnterococcus hirae ATCC9790より、リポタイコ酸の少量画分中に、強力なサイトカイン誘導活性を見出した。疎水カラムクロマトグラフィーによって得られた5つの画分はそれぞれ特定の繰り返し構造を有した微細不均一な化合物であることが予想される。畑中は糖鎖型光アフィニテイープローブとして、新規ビオチン化アフィニテイープローブの開発と、ラベルを高感度に検出する非放射性標識検出系を確立し、牛β-ガラクトシルトランスフェラーゼへの適用を行った。小川は大腸菌リボソームを利用した糖タンパクのin vitro系再構築を目指す一環として、N-アセチルグルコサミンを有するピューロマイシンを合成し、翻訳系との相互作用を検討している。さらにN-アセチルグルコサミンを有するtRNAの合成にも着手した。またコンドロイチン硫酸の選択的な硫酸基の導入を考慮して完全保護コンドロイチン(八糖)の合成に成功した。
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