糖鎖遺伝子の特異性

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05274103
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 谷口 直之 大阪大学, 医学部, 教授 (90002188)
• 研究分担者: 谷口 克 千葉大学, 医学部, 教授 (80110310) ; 古川 鋼一 長崎大学, 医学部, 助教授 (80211530) ; 佐内 豊 東京都臨床医学, 総合研究所, 室長 (40150289) ; 成松 久 創価大学, 生命科学研究所, 教授 (40129581) ; 村松 喬 名古屋大学, 医学部, 教授 (00030891)
• キーワード: 糖鎖遺伝子 / 糖タンパク質 / Gal転移酵素 / トランスジェニックマウス / シアル酸転移酵素 / T細胞受容体 / シアリダーゼ

研究概要

ヒトGlcNAc転移酵素VのcDNAクローニングと染色体マッピングに成功した。GnT-Vはアミノ酸741残基、N-結合型糖鎖付加サイトを5ヶ所持つ糖タンパク質であることが推定され、染色体に2q21にマップされた。また、ヒト神経芽腫細胞株GOTOを、cAMPで神経細胞にBrdUでシュワン細胞様細胞に分化させGnT-III、Vの活性を測定した(谷口直)。Galα1-3Gal結合を合成するα-1,3-Gal転移酵素cDNAを導入したトランスジェニックマウスについて解析した。このマウスは腎臓の尿細管、肺の上皮、目の網膜などに、α・Gal構造を新たに、あるいは量的に増加して発現していた(村松)。PCR法にて7人のルイス血液型陰性の個体より、FucTIII、V、VI遺伝子をクローニングした(成松)。ブタ顎下腺のGM3合成酵素(α2,3シアル酸転移酵素)の精製を行った(佐内)。GalNAc転移酵素遺伝子の発現と酵素活性および糖鎖発現の関連をヒト細胞株において検討し、翻訳後の修飾による活性の調節機構があることを見出した(古川)。T細胞受容体遺伝子とその副次的産物である環状DNA検出のための方法論の確立を行った(谷口克)。α-galactosidase A欠損によるSchindler-Kanzaki病のマウスモデルを作出することを目標として、マウスα-galactosidase A遺伝子のクローニングとその解析を行った(辻)。酵母Saccharomyces cerevisiaeにおける糖鎖付加変異株を作製し、酵母での発現系を用い糖鎖付加を解析した結果、本来の糖鎖付加部位(79,188番)に付加されているよりも大きな糖鎖が付加(hyperglycosylation)されていることがわかった(堀之内)。ラット脳形質膜シアリダーゼと免疫学的に交叉性を示すガングリオシド・シアリダーゼをウシ脳課粒画分から高度精製した(宮城)。PNH症例の末梢血異常細胞にGPIアンカーの合成不全を検出し、さらにアンカーを構成する糖鎖の合成欠損部位を同定した(中熊)。酵母の糖鎖遺伝子の局在を同定した(太田)。

研究成果

• [文献書誌] Ihara,Y.: "cDNA cloning,expression,and chromosomal localization of human N-acetylglucosaminyltransferase III(GnT-III)" J.Biochem.113. 692-698 (1993)
• [文献書誌] Furukawa,K.: "GD2 ganglioside on HTLV-I infected T cells:possible activation of β1,4 N-acetylgalactosaminyltransferase gene by p40^<tax>." Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 90. 1972-1976 (1993)
• [文献書誌] Yuki,N.: "Frequent presence of anti-G_<Q1b> antibody in Fisher's syndrome." Neurology. 43. 414-417 (1993)
• [文献書誌] Makino,Y.: "Extrathymic development of V α 14 positive T cells." J.Exp.Med.177. 1399-1408 (1993)
• [文献書誌] Nishihara,S.: "α(1,3/1,4)fucosyltransferase(Fuc T III)gene is inactivated by a single amino acid substitution in Lewis histo-blood type negative individuals." Biochem.Biophys.Res.Commun.196. 624-631 (1993)
• [文献書誌] Huang,R.-P.: "Embigin,a member of the immunoglobulin superfamily expressed in embryonic cells,enhances cell-substratum adhesion" Dev.Biol.155. 307-314 (1993)