研究課題/領域番号 |
05274210
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
武富 保 信州大学, 医学部, 教授 (30020704)
|
研究分担者 |
原 厚 信州大学, 医学部, 講師 (70126697)
上村 敬一 信州大学, 医学部, 助教授 (80012756)
|
キーワード | スルファチド / 血液凝固阻害作用 / フィブリノーゲン / リポタンパク質 |
研究概要 |
哺乳動物の血清リポタンパク質の主要構成糖脂質であるスルファチドの血液凝固阻害作用のメカニズムを明らかにすることを目的として研究を行った。外因性凝固系の測定法であるPT法を用いて血液凝固阻害作用を検討したところ、用いたtissue factorの量に応じて著明な血液凝固阻害活性が観察された。この結果からスルファチドは生体に投与した場合には血栓形成阻害剤として有効であること、さらに正常の哺乳動物の血清リポタンパク質の構成成分としては生体内で血液凝固阻害剤として重要な生理的役割を演じている可能性が示唆された。一方、スルファチドの血液凝固阻害作用のメカニズムを研究したところ、スルファチドはフィブリノーゲンと特異的に結合することが明かとなった。この結合によって両者は不溶性の沈降物を生成するが、この沈降物中のスルファチド及びフィブリノーゲンの組成を分析したところ、フィブリノーゲン1分子当りスルファチドが約400ケ結合していることがわかった。スルファチドは脂質であるので水溶液中ではミセルを形成してフィブリノーゲンと反応しているものと考えられた。そこで、スルファチドを生理食塩水に溶かしセファロースCL-4Bカラムによるゲル濾過を行ったところ、スルファチドは分子量約190万の球状タンパク質に相当する大きさでほぼ均一なミセルを形成していることがわかった。これらの結果から、スルファチドの血液凝固阻害作用はフィブリノーゲンに巨大なスルファチドのミセルが結合することによって、トロンビンがフィブリノーゲンに結合できないか、もしくはトロンビンの切断部位を遮蔽することによってフィブリンの生成を抑えているものと推定された。その結果、フィブリンが生成されず、最終的に血液凝固が阻害されるものと考えられた。
|