研究概要 |
本研究の目的は、形態形成に寄与する細胞壁微細立体構造の特徴と細胞壁形成の制御に関わっている蛋白質を明かにすることである。本年度は、そのために適切な実験材料と実験方法を検討することに重点を置いて研究を進めた。 始めに、タバコBY-2細胞の形態形成に対する薬剤の影響を調べた。タバコBY-2液体培養細胞をAPMで処理すると細胞は球形に膨らんだ。また、ジベレリン合成阻害剤として知られるuniconazoleを加えると不定形に膨潤した。この時、ジベレリンを加えると、長期間の培養後、uniconazoleの作用が軽減された。高浸透圧下で、cellulose合成阻害剤と知られる2,6-dichlorobenzonitrileを加えると、細胞壁に穴があきプロトプラストが細胞壁の外に出てきた。次に、BY-2の細胞壁微細構造に対する薬剤の影響を調べた。無処理、APM処理、uniconazole処理の細胞を乳鉢中で液体窒素により凍らせた後破砕し、細胞壁を単離した。単離した細胞壁をカバーグラスに張り付け、凍結乾燥後、回転シャドーレプリカを作り電顕で観察した。その結果、培養細胞では無処理でも、細胞壁の微細構造が場所毎でかなり異なっていることが判り、薬剤の細胞壁の微細構造に対する影響を検討するには不適当であることが判った。 一方、エンドウ芽生えの形態形成に対する薬剤の影響を調べた。播種後3日目の芽生えをAPM溶液で処理すると、茎と根の成長が阻害され、成長域が横に膨らむ。uniconazoleで処理すると、根の成長が阻害され、成長の止まった部分も含め成長域周辺がやや膨らむ。次に、エンドウ芽生えの細胞壁微細構造を観察した。無処理、APM処理、uniconazole処理の根から切片を切りだし、カバーグラスに張り付け、凍結乾燥後、回転シャドーレプリカを作り電顕で観察した。その結果、APM処理、uniconazole処理によって微細構造が変わる傾向が認められた。
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