栄養ストレス下における植物生産-栄養ストレス耐性植物の育成

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05278105
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 茅野 充男 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 名誉教授 (10007677)
• 研究分担者: 佐野 浩 奈良先端科学技術大学院大学, 遺伝子教育研究1センター, 教授 (20178809) ; 関谷 次郎 京都大学, 大学院・農学研究科, 教授 (10035123) ; 松本 英明 岡山大学, 資源生物科学研究所, 教授 (80026418)
• キーワード: 植物 / 栄養ストレス耐性 / 食糧生産 / 遺伝子 / 形質転換 / 重金属 / アルミニウム / イオウ

研究概要

本研究は栄養ストレス耐性植物の育成を目指している。本研究で取り上げた課題は、酸性土壌におけるAlおよび重金属の過剰、S欠乏および過剰耐性植物の育成である。
Al過剰については酵母をAl過剰処理したときに誘導される2つのcDNAクローン(pAL1001,1003)を単離し、その塩基配列を決定したところ一つは熱ショックで誘導される細胞外分泌性タンパクであり、他の一つは膜表層タンパクであることがわかった。これらはいずれもAlとZnで誘導されるが、他の金属イオンストレスでは誘導されなかった。また、酵母のAl耐性変異株を分離した(松本)。重金属についてはシロイヌナズナのメタロチオネイン遺伝子についての機能解析を行い、メタロチオネインが重金属耐性だけでなく、細胞分化などの植物体を作るために本質的な役割を担っていることを明らかにした。(茅野)。Sストレス下で最も影響される代謝系の解析とその酵素の精製を試み、APS(adenosine 5'-phosphosulfate)スルフォトランスフェラーゼがkey enzymeであると認定し、酵素の精製に成功するとともに、酵母のPAPS還元酵素欠損変異株を相補するダイコンcDNAを単離し、解析中である。(関谷)。システイン合成酵素の遺伝子が単離され、その機能として硫化水素耐性増大のあることが判明した。硫黄代謝にかかわる他の遺伝子群の機能解析を行い、効率のよい硫黄ストレス耐性植物を作製するためには、律速段階酵素遺伝子を多重導入する必要があることを示唆した。(佐野)。

研究成果

• [文献書誌] Yamashita,K.: "Enhancement of nitrate efflux and the plasma membrane hydrogen ion-transport activity of barley roots by nitrate treatment." J.Plant Nutr.20・6. 657-668 (1997)
• [文献書誌] Ma,J.F.: "Internal detoxification mechanism of Al in Hydrangea.Identification of Al form in the leaves." Plant Physiol.113・4. 1033-1039 (1997)
• [文献書誌] Ma,J.F.: "Detoxify aluminum with buckwheat." Nature.390・11. 569-570 (1997)
• [文献書誌] Yamamoto,Y.: "Oxidative damage to membranes by a combination of aluminum and iron in suspension-cultured to bacco cells." Plant Cell Physiol.38・12. 1333-1339 (1997)
• [文献書誌] Ara,T.: "Non-radioactive adenosine 5'-phosphosulfate sulfotransferase assay by coupling with sulfite reductase and O-acetylserine(thio)lyase." Biosci.Biotech.Biochem.61・4. 621-624 (1997)
• [文献書誌] Nakamura,T.: "Molecular characterization of atcs26,a gene encoding a novel cysteine synthetase from Arabidopsis thaliana." Plant Physiol.114・4. 747 (1997)