研究概要 |
今年度は,まず,既存の環境援助計画に関する現状を分析することにより,地球本位型社会形成への法的・政策的支援手法の見取図を描くことから研究を開始した。その結果,支援手法は規制手法とともに地球本位型社会形成のための計画手法を構成し,支援手法は技術移転,資金供与,情報提供などから構成され,支援手法と規制手法はハードローおよびソフトローのなかで採用され,両手法は国際機関,多国間関係および二国間関係において採用されていることが分かった。次に,地球益のみならず人類益という共通利益を実現することを目指している地球環境に関する国際条約(国連海洋法条約,気候変動枠組み条約,世界遺産条約,ワシントン条約,ボン条約,生物多様性条約)を検討し,そこにみられる支援手法を明らかにした。その結果,先進国にはその責務を強調する差別的義務を課し,途上国には国際基金を利用した資金援助や技術移転などに対するアクセスを認めるという手法が特徴的に浮き彫りにされた。最後に,途上国への開発・環境援助に関する国際機関として世界銀行(世銀)をとりあげ,その支援手法と問題点をさぐった。ところで,世銀の支援手法には,開発融資の際の環境配慮と途上国の環境保護プロジェクトに対する環境保全型貸付の二つがある。これまでの世銀の貸付プロジェクト中,前者に属するインドのナルマダ流域開発プロジェクトの教訓は,移住問題の複雑性とそれに対する世銀側および借入側の対応能力の強化の必要性を指摘するものであった。
|