低栄養ストレス条件下でも期待する収量が得られるように、栄養素の利用効率を高めた作物を作出する観点から、本研究ではイネ科およびマメ科作物を種々の栄養条件下で栽培し、炭素、窒素代謝系、糖代謝系およびストレスに関わる幾つかの酵素について、以下の成果を得た。 1.Sucrose phospate synthase(SPS)活性は-N、-S条件下ではコムギ、トウモロコシ、ダイズで活性が低下したが、-Pおよび-Kでは、コムギとトウモロコシでは活性が減少するのに対し、ダイズではむしろ増加した。Phosphoenolpyruvate carboxylase(PEPC)活性はダイズでは-N、-P、-Sのいずれでも変動は認められず、-Kでは増加した。コムギおよびトウモロコシでは、-N、-Sで減少したが、、-P、-Kでの増加した。-Pでは現象はイネ科作物ではPlaxtonらの報告のようにPEPC活性を上昇させることによりリンの再生産を行っている可能性があるが、マメ科ではこのような調節はみられず、作物種によって応答のしかたが異なることが判明した。カリやイオウ欠乏による両酵素活性の変動は本研究で初めて認められた現象であり、その代謝制御に興味が持たれる。 2.Branching enzymeに注目し、トラマメ登熟種子からの精製を行った。イネやトウモロコシ酵素とはイオン交換での溶出位置が大きく異なること、また活性染色法により2種のアイソザイムが存在することが判明した。さらに、登熟期でも活性が発現されるα-Amylaseおよびα-Glucosidaseを単一に精製し、cDNA遺伝子解析を行った。 3.種々のストレスによって誘導されるPeroxidaseについて、イネ苗条より2種のisozymesをコードするcDNAを単離した。これらの遺伝子は葉、茎、根で発現されており、傷害、エテホン処理、H_2O_2処理などで誘導されることがわかった。
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