本研究により、新しい農法である不耕起栽培法は、わが国の畑生産の大部分を担う火山灰土壌において、次に挙げる意義と価値を有することが明らかになった。 1)省力・省エ効果が大きくため農産物の生産コストが低減される。 2)不耕起栽培の全炭素および全窒素量は、耕起栽培よりも多いことから、本農法は土壌有機物を蓄積し、土壌環境の劣化が防止される。 3)表層からの10cm迄の部分のpHが低下し、強酸性を示した。これはCaの溶脱に起因していた。根が深く侵入するトウモロコシや飼料カブではほとんど影響しない。しかしながら、根が浅く、酸性を嫌う小麦では生育が大きく阻害された。この阻害は石灰肥料の施用で回避された。 4)物質代謝の担い手である微生物フロラや作物養分プールである微生物バイオマス窒素、およびセルロース、タンパク質や有機燐の解速度(深さ10cm迄の作土層上部)を高める。これは、本農法は、耕作を最小限のとどめるため土壌微生物や土壌動物の住処を壊されないことにある。
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