現在、砂漠化は半乾燥地を中心に世界的規模で進行しており、大きな地球問題となってきている。土壌を修復し、植生を定着させることを図るためには、土壌中の水分動態を把握することが大きな鍵である。本研究では、これまで実際の実験が困難なことから理論的な解析に留まっている、植物根近傍の水分動態を、直接、非破壊状態で像として得ることを試み、合わせてその解析も行った。植物試料としてダイズを用い、アルミニウムの薄箱中(120×160×3mm)で育成しながら、経時的に根及び根近傍の土壌中の水分動態を中性子ラジオグラフィ法で像として得た。中性子照射は日本原子力研究所の原子炉JRR3で行い、試料を通過する中性子をガドリウムのコンバータでγ線に変換し、X線フィルムを感光させた。X線フィルムには、土壌より水分量が多い根の形態が側根を含め、はっきりとした像が写し出された。本法による像の分解能は100μm以下であった。土壌中の水分量の変化は、フィルム上の黒化度として得られ、特に根の近傍1mm以下の地点まで解析可能であった。 これら根及び根近傍の水分動態を解析するため、X線フィルム上に得られた水分像の画像解析を試みた。まず、土壌中の水分量を4-16分割することにより等水分線を求めたところ、根の上部が最も等水分線の密度が高いことが判った。次に、像を根の上部から下部にかけて、数箇所、根の垂直に切った水分像の断面図を求めた。根の近傍数mmの地点での水分吸収は、根の上部が最も多くまた下部からの吸収も示された。また、根より数cm離れた地点での水分吸収は根の下部から上部にかけて次第に増大することが示された。本研究で示された、1本の根からの水分吸収の根の部位による差異は初めて実験的に見いだされた結果であり、今までの理論解析における一様な根のモデルは見直しが必要になると思われる。
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