本研究は、酸素富化空気を生産し、省エネルギーに役立つばかりではなく、大きな環境問題の一つとなっている二酸化炭素の選択的回収をも可能とする選択的気体分離膜素材ポリマーにを、枝分れ高分子に関する基礎科学としての観点から、統一的に、構造の明確な高分子の機能発現に関する基本的理解を得、新機能材料を分子設計により創製して環境問題の解決に寄与することを目的とした。 具体的研究方法としては、重合性を持つオリゴジメチルシロキサンを合成し、その成膜性、気体透過機能を評価し、透過特性を支配する因子を明確にすることを実験方法とした。 ビニル重合型のポリマーについては、シロキサン鎖の導入により、ポリマーの物性を有効に制御できることが示された。固体NMRを用いて側鎖の運動性を評価したところ、側鎖の局所的な運動性が物性を大きく支配することが明確になった。オリゴシロキサンの導入がガラス転移温度を下げることも明かになったので、高温でも使用できる材料の設計を目指して、ポリアミドを組み合わせた。重縮合系のポリアミドやポリイミドの主鎖、あるいは側鎖にオリゴシロキサンを導入しても、ビニルポリマーと同様の効果が見られることが明確になった。 さらにビニルポリマーの物性の向上を目指して、ポリアミドマクロモノマーを合成し、その効果を検討した。ポリアミドマクロモノマーは、その相溶性に応じ、ビニルポリマーの物性を向上させることが分かった。このことを利用し、単独では成膜性のないポリ{(4-ヘプタメチルトリシロキサン-1-イル)スチレン}に成膜性を与え、優れた選択気体透過能を付与することができた。
|