近年、エレクトロニクスをはじめとする先端技術産業では、工業原料として従来用いられることのなかった化学物質が大量に使用されるようになってきている。それらの多くは未規制の新規化学物質であり、その中には有害な物質も少なくない。そのためこれらに起因するいわゆる“ハイテク汚染"が社会的に憂慮される事態になりつつある。半導体製造用として需要が急増している特殊材料ガスもその一例であり、それを含むプロセス排ガスの安全な制御・処理が環境安全対策上緊急の課題となっている。本研究は、将来一段と問題が深刻化することが懸念される先端産業排ガスを適切に処理し、さらに資源として有効利用し得るような新しい先導的手法を創生することを目的とする。平成5年度は、n型半導体の製造原料で、有害かつ自然発火性の危険なガスとして特定されているホスフィン(PH_3)を除去対象のモデルガスとして選び、新しい反応剤開発のための基礎的なデータを集積し、併せて、資源再利用の観点から、固体反応剤表面上での有用ガス分子の化学的動態を明らかにすることを試みた。種々の遷移金属塩を担持した処理剤を作成し、PH_3処理能を求めたところ塩化第二銅が最も高い処理能を示した。また反応剤のPH_3処理能は、前処理として行った加熱焼成の温度に依存することも明らかになった。さらに、破過に達した処理剤を一旦処理管から取り出した後、再び管に充填し直して、PH_3処理能を測定したところ処理能力は全く失われていたが、この処理剤を再び処理管から取り出して、再焼成して使用したところ、PH_3に対する処理能力の回復が見いだされた。この事実は、反応剤の繰返し再生利用の観点から極めて興味深く、さらに研究を進めていく必要がある。
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