研究課題
総合研究(A)
いわゆる「リゾート法」による大規模なリゾート開発と対比しながら、「もうひとつのリゾート」、つまり、小規模ながら自然と農業との共生を図りながら過疎地の活性化を行おうとする構想と実践を追うことを本研究の目的とした。調査地は北海道に限定した。まず、欧米における“resort"がどのようなものであるかを見、さらに日本の農業・過疎問題に対する政策を見たあと、1980年代以後の日本におけるこれら二種のリゾートの動きを見た。次に、広大な自然を持つ北海道において、1980年代以来、これら二種のリゾートの動きがどのように展開されてきたか、その経過を調べた。最後に、北海道における「もうひとつのリゾート」(北海道では、それは「農村ホリデ-」と呼ばれている)の実践の事例について8箇所において綿密な調査を行った。「もうひとつのリゾート」は、すでに、日本の各地に芽生えてきているが、北海道におけるその試みは日本の中でかなり先進的なものであると思われる。そこでは、北海道庁、市町村と住民の三者がタイアップすることによって、要するに、新しい農村づくりの試みに取り組んでいる。より具体的に言えば、単なる食糧生産基地としての農村ではなく、美しく、健康的な自然を保持しながら、畑作や酪農を行い、同時に、そこを都市居住者がゆったりと過ごしうる場にもしていこうとしている。いわゆるファームインも10箇所程度作られている。これは農業の多角経営の動きと言ってもよい。このような動きがさらに広まって日本の過疎地または中山間地の窮状を打開することになるかどうか、そのためには、日本の農業政策の転換が要望される。