平成5年度は東北地方の各県の農業動向の統計資料の収集、関係資料の収集と分析を進める一方、青森県十和田市、田子町、岩手県釜石市、葛巻町、宮城県迫町、宮崎町、福島県東和町などを中心に、各地の農業の現状分析を行った。東北地方の農政担当者は農水省の「新しい食料・農業・農村政策の方向」(いわゆる『新政策』、平成4年6月)という新プラン推進に加え、本年度はウルグアイ・ラウンドの決着によって外部からも農業再編を迫られることになり、それでなくてさえ後継者不足、高齢化に直面している農村・農家との対応に苦慮している実態が明らかになっている。特にこれらの地方では冷害に因る甚大な農産物被害によって農業意欲を減少させる農家が更に増加していることに加え、バブル崩壊の影響もあり農村誘致企業の撤退、出稼ぎ先の減少、そして悪い労働条件は農家生活を危機に陥れて、農村内部から集落解体の兆候が顕在化してきている。他方、市町村それぞれの中に独自の個性的な農業を営む農民、そして農業対策も散見される。 新政策の求めている農村社会とは、わが国の「食料」供給基地であり、厳しい効率的経営を基礎にし、差別化による競争原理を徹底的に追求し、都会並みの所得、労働条件を享受できるという企業的大規模経営群の農業経営者が中心を占め、彼等と補完的な役割を持つ多様な小規模農家群によって構成される地域社会である。今後、このような地域社会がこの地方で実現可能なのか、阻害要因があるとすれば何かも明らかにしなければならない。現在、各市町村では活性化対策が多様に展開されているが、その中でも農業活性化は中心的課題であるが、厳しい環境の中で、農家、そして青年がどの様に生き、対応していこうとするか苦しい選択に直面している。
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