研究課題
平成5年度は、計4回の研究会(研究分担者報告、非分担者講演を含む)および計2回の現地視察(中国・四国地方、淡路島など兵庫県)を行った。研究会では、歴史学、国文学、宗教学、民俗学などの各研究者の専門的視点から『一遍聖絵』を検証し、各専門分野において出された成果を相関させることで、新たな学際的問題提起がなされた。また、それら研究会で得られた成果を、現地視察によって確認することができた。以上のような研究会・現地視察の有機的結合により、以下の成果が得られた。すなわち、1.教信寺(加古川)の背後の山との関係について、絵画技法上の問題もあろうが、古代中世の交通路(山陽道)との関連もあわせて考えるべきであるとの見解が出された。2.聖絵の成立時期を通説より引き下げて考えるべきかとの見解が出された。3.淡路の天神社の現状と聖絵との地形的相違から、その位置が中世以降移動しているのではないかという仮説が提出された。4.絵画技法上の問題もあろうが、海岸線が後退したのではないかとの疑いがもたれた。5.淡路二の宮の詞書にみえる、社が西面していたという事実を裏付ける証拠を確認した。『一遍聖絵』の諸本の校合を円滑に進めるため、必要な絵画資料を蒐集し、その一部をコンピュータに入力中である。
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