研究課題
総合研究(A)
(1)廻船経営右近家の経営が天明期から寛政期に一転換期を迎え、それまでの荷床船段階から、買積み中心の廻船経営に変化したことが明らかにされた。そして天明や天保の大飢饉による需要の増大が、右近家の経営発展の一大画期であったことも明らかにされた。船内の階層による賃金体系や、水主の違いも明らかになった。右近家の東京進出は、はじめに三井物産との取引関係を介在として行われた。明治10年代のはじめは銀行の電信為替利用のみであったが、これを媒介に19年頃から東京本店との取引を開始21年からは兵庫支店との取引を本格的に開始した。この時期の西洋帆船購入とともに、経営の画期が20年代に存在していた。(2)商品流通・商業松前商人と敦賀商人間の資金流通に北前船が介在していることが明らかになった。また問屋の新規開店に際し、販路確保のため北前船が顧客の紹介をしていることも明らかになった。従来あいまいなとらえられ方がされてきた仕切状について、売仕切・買仕切の別の意味、委託売買に伴う典型的な仕切状と手数料記載のない代金請取書と判別の難しいものの別、航海のなかで実際に仕切状が作成される時と場などを考察する中で、仕切状の持つ新しい機能が明らかになった。また右近家の持船の主な寄港地が松前・敦賀・室津・兵庫・下関・兵庫・大阪であり、特に大阪では松前問屋が靭の島に集中しており、地域的に組織的なまとまりをもっていたことも判明した。
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