研究課題/領域番号 |
05301045
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研究種目 |
総合研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
東洋史
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研究機関 | (財)東洋文庫 |
研究代表者 |
志茂 頡敏 財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (80142058)
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研究分担者 |
松田 孝一 大阪国際大学, 経営情報学部, 教授 (70142304)
加藤 和秀 東海大学, 文学部, 教授 (60056091)
北川 誠一 弘前大学, 人文学部, 教授 (50001813)
小山 皓一郎 北海道大学, 文学部, 教授 (00002163)
本田 實信 名古屋商科大学, 商学部, 教授 (50000526)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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キーワード | 部族連合 / 王族 / 擬制的家族員 / 姻族 / 譜代家人 |
研究概要 |
イル汗回存亡の危機に即位したガザン汗は宰相ラシード・ウッディーンに『モンゴル史』(Tarikh-i Ghazani)編纂を厳命した。編纂事業を通じ摩下のモンゴル諸部将nokor達にチンギス汗一門との強い絆を再確認させ、彼等との結合を強化し、強固な政権確立を目指したのである。『tarikh-iGhazani』の核心部分をなす巻頭の「部族誌」の記事の多くはカザン汗の口述に拠って書かれており、そこには政権確立を要求するカザン汗の執念が集約されている。『Tarikh-i Ghazani』はオルジェイト汗時代に『集史』「モンゴル史」として改変され、「部族誌」中の多くの記事が削除されたが、『集史』附篇「モンゴル系譜」中に新たな情報がつけ加えられた。『Tarikh-i Ghazani』「部族誌」と『集史』「モンゴル系譜こそは、モンゴル帝国の国家構造を明確に記したモンゴル帝国史研究上の最重要史料であり、文中、モンゴル語術語nokorをamir-ibuzurgとペルシア語訳して記した。「大きい」を意味する形容詞buzungは「チンギス汗」、「チンギス汗一門」、「王族」を意味する名詞として使われている。ところが、諸先学は頻出するamin-ibuzurgをgreataminの意の普通名詞としか理解できず、これら二史料を考察の対象外に放置し続けてきたが、これらを分析することにより、「モンドル帝国は、王族チンギス汗一門と準王族である特定部族が政権の中枢を占めて一般の諸部族と連合した遊牧部族連合国家であり、匈奴、突款、回鶻等一連の遊牧国家の系列上にある」と実証される。 現在『Tarikh-i Ghazani』原典は失われたが、『集史』「モンゴル史」の諸写本中、イスタンブル写本(Revan Kosku 1518)は『Tarikh-i Ghazani』原典にほぼ近い形を伝えており、モンゴル帝国史研究上、中心に据えられるべき写本であることが確認される。その他いくつかの古写本はイスタンブル写本を補う意味で役に立つ。
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