研究課題
平成六年度は蝦夷館関連遺跡の発掘調査を実施し、あわせて奈良・平安時代の北日本関係の文献史料を六国史その他から抜粋し、分析を行なった。発掘調査の対象としたのは岩手県岩手郡岩手町横町館遺跡と岩手県岩手郡西根町子飼沢山遺跡である。横田館遺跡は地元においてかつて蝦夷が住んでいたという伝承のある遺跡で、実地踏査と測量調査の結果、旧斜面に囲まれた高地の周囲に多重の土塁をめぐらし、内部には十数基の竪穴住居跡がくぼみとなって残存していることを知りえた。発掘調査はそのうちの二基について実施した。調査によって明かとなった住居の形態や構造から、横田館遺跡は長期にわたる住居として営まれたものではなく、しかもきわめて防禦性の高い集落であることを知りえた。遺跡の年代は古代末から中世初期と考えられる。子飼沢山遺跡は海抜500メートルを越える山頂付近に位置する。実地踏査と測量調査の結果、、遺跡は稜線上に四基の大きな竪穴住居跡とそれらに付随するように散在する小竪穴が、あわせて約二〇基程度存在することが判明し、そのうちの大小各一基を発掘調査した。その結果、住居はかまどを有する構造のもので、出土土器から一〇世紀代のものと考えられ、防禦性の高い古代高地性集落の代表的なものと考えられた。一方、奈良・平安時代の北日本関係の文献史料を分析すると、古代蝦夷の社会は部族制社会であると推測され、このような社会において高地性集落などの防禦性の高い集落の出現することは、きわめて妥当性が高いことが考えられた。
すべて その他
すべて 文献書誌 (2件)