研究課題
平成七年度は岩手県岩手郡西根町寺田の暮坪山の山頂部に所在する暮坪山遺跡の発掘調査と岩手県北部を中心に高地に所在する集落遺跡の踏査を実施し、あわせて三年間にわたって行なってきた蝦夷館研究のまとめを行なった。発掘調査を行なった暮坪遺跡は海抜430メートルの暮坪山の頂上一帯に広がる遺跡で、20個内外の竪穴住居跡がくぼみとなって観察できる。集落のまわりはけわしい斜面になっている。今回の調査ではそのうちの二基をえらんで発掘した。その結果、一辺が約六メートルほどの大形の住居と、一辺約三メートルほどの小形の住居の二つのタイプがあることが確認された。住居構造は壁際に石を組んだカマドのあるものである。また今回発掘した大形の住居は火災で焼失していた。また集落の主要部は堀と土手に囲まれていることも確認した。今回発掘した住居の年代は出土した土師器から考えて10世紀後半から11世紀前半ころのものである。以上のことから暮坪遺跡は防御に意を用いた平安時代後期の高地性集落であることが判明した。なお実地踏査により、東北北部には暮坪遺跡以外にもまだ学界に知られていない多くの高地性集落が存在することも判明した。そして三ヶ年にわたる「蝦夷館」ともいわれる遺跡の研究により、東北北部には平安時代後期に中心のある高地性集落があることが判明し、その研究を進めることは、古代蝦夷社会の性格など、学界未解決の問題にせまる有力な手がかりとなることがほぼ明らかとなったのである。
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