研究課題/領域番号 |
05301060
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岩倉 具忠 京都大学, 文学部, 教授 (50093191)
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研究分担者 |
小林 満 京都産業大学, 外国語学部, 講師 (50242996)
柴野 均 信州大学, 人文学部, 助教授 (30162639)
斎藤 寛海 信州大学, 教育学部, 教授 (00020628)
米山 喜晟 大阪外国語大学, 外国語学部, 教授 (20065808)
阿部 史郎 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (50065752)
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キーワード | 啓蒙主義 / ロマン主義 / イタリア近代社会 / 「近代化」 |
研究概要 |
研究の最終段階として明らかになった問題点は以下のごとくである。イタリアにおいては十八世紀から十九世紀にかけて、それ以前の世紀とは比較にならない重要性を持った知識階級の形成が見られるが、この事実がイタリアの近代的市民社会の成立と密接な関係があることは言うまでもない。ところが絶対王政から資本主義社会へと移行した西ヨーロッパの近代化とは異なり、イタリアにおいては市民社会の成熟を見る前に王侯・聖俗貴族や特権商人が温存されたままで、いわばかれらの主導権のもとに「資本主義」への移行が行われた。イタリアの知識階級の性格の理解には西ヨーロッパの典型的な「近代化」とは異なった後進性を示すイタリア社会の前提条件の詳細な分析が必要であることが明らかにされた。同時に多数の国家から成り立つ統一以前のイタリアにおいては南北等の地域差が知識層の形成についても微妙な影響を及ぼしたことは注目に値する。またイタリア知識層にとってヨーロッパ諸国への移動の自由と亡命の可能性が、比較的自由な人的交流を促進し、国際的な規模での知的交流を密にしたことも見逃せない事実である。イタリアの経済・政治・社会・文化の各分野からの研究成果を持ち寄ってそうした社会的前提条件を解明すると共に、イタリア知識層が国家権力とどのように関わり、また対立したかを具体的に明らかにすることによって、歴史的全体像を浮き彫りにする必要があった。この「近代化」の後進性と知識層との関係は、典型的ヨーロッパ型とは異なった過程を踏んで近代化を成し遂げた日本社会と近代日本知識層との相関関係を考えていく上でも、貴重な示唆を与えるものと確信する。
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