研究課題
本年度は、最終年度であり、各分担者がそれぞれ研究成果をとりまとめるための努力を行った。まだこの報告書を執筆する時点では、残念ながら成果をとりまとめられるところまでは至っていないが、以下のような研究成果が上がってきている。1)契約の核を為す「合意」は、実際には、当初から明確な実体として存在するのではなく、当事者、そして裁判官が具体的な契約紛争を処理していく過程で、合意を定義し、確認していくことが行われていること、そしてここに、権力の排除、知識の充実、そして境界の維持という理念的な合意を求める普遍的な関心が働いていることが、実証的、分析的に抽出された。2)今日の契約法では様々な形で当事者の合意したものを第三者的に評価して、その適正化を図る関与が行われるが、そこには、契約自由の行き過ぎを否定して契約正義を外から持ち込むばかりではない、合意を助け、契約自由をむしろ貫徹していくための介入、さらには、一つの協働プロジェクトとしての契約を支える関係性の持ち込みも行われていることが明らかにされた。3)日本の契約法では、アメリカと比較した場合、「合意」に社会常識の規制を通して「コンセンサス」の意味がしばしば読み込まれているが、これはそのまま不法行為法との境界の喪失という現象となって現れていることも指摘された。他にも、いろいろ興味ある知見が得られていおるが、「研究成果報告書」のまとめを一つの区切りとして、引き続き学術書として全員が執筆したものをまとめたいと思っている。
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