研究課題
総合研究(A)
3年間にわたって10名の研究者が討論を重ね、また手分けして実証研究を行ってきた結果、次のような成果が得られた。1)契約の核をなす「合意」は、実際には、当初から明確な実体として存在するのではなく、当事者、そして裁判官が具体的な紛争を処理していく課程で、合意を定義し、確認していくことが行われていること、そしてここに、権力の排除、知識の充実、そして境界の維持という理念的な合意を求める普遍的な関心が働いていることが、実証的、分析的に描出された。2)今日の契約法ではさまざまな形で当事者の合意をしたものを第三者的に評価して、その適正化を図る関与が行われるが、そこには、契約自由の行き過ぎを否定して契約正義を外から持ち込むばかりではない。合意を助け、契約自由をむしろ貫徹していくための介入、さらには一つの協働プロジェクトとしての契約を支える関係性の持ち込みも行われていることが明らかにされた。3)日本の契約法では、アメリカと比較した場合、「合意」に社会常識の規制を通して「コンセンサス」の意味がしばしば読み込まれているが、これはそのまま不法行為法との境界の喪失という現象となって現れていることも指摘された。以上の他にも、合意の中に、明確な合意だけでなく、小さな合意、準合意と呼べるようなものがあって、それらが契約紛争の処理に大きな作用を果たしていること、また、当事者のそのつどの関心、状況的要因の布量いかんによって、合意は脇へのけられたり、その意味が便宜的に定義されたりすることも実証研究を通じて明きらかになった。
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