研究課題
1.平成5年、児童相談所6施設、東京の子どもの虐待防止センターに「児童虐待に関する調査」を依頼実施。 451ケースについて児童虐待の形態、背景等の類型化を目的とした林の数量化理論第3類を用いた因子分析を試みる。更に虐待種類別加害者の類型別の分析を行い社会学、心理学、医学、法学の多方面から検討を行う作業を続行中。2.本年、首都圏内及び大阪市内の3歳児までの子どもをもつ母親を対象として一般調査(有効回収563)を実施。コンピュータ整理を行い結果分析に着手、現在尚継続中。一般家庭における児童に対する暴力的行為の実態、それを促す状況、暴力的行為をする母親の特徴、家庭・近隣者との関係等が明らかになってきている。特に、母親自身の「子育て」や「児童虐待」についての認識度を把握することができたのは一つの成果といえる。これにより、児童虐待と区別されるべき親のしつけのための行動基準を示すことができるのでは。3.施設に収容されている女子(成人・少年)の殺人、強盗、暴行、傷害事犯について、事犯の内容、特徴、幼児期の親子関係、被害体験の有無等の調査に着手。現在までに収集した事例を見る限りでは、常習的な暴力加害者と児童期の暴力被害との関係は、女子少年については概ね検証されるように思われるが、成人女子については幼児期の体験に関する記憶が薄れており明確ではない。ただ面接結果から、強烈な被害体験(例えば性的被害体験等)がその後の結婚観、人生観、職業観等の生きる方向を決定する際に暗い影を投げかけていること、粗暴な犯罪や非行には親の素質や性格等の影響も無視できないといった点が指摘可能か。以上の結果、常習的暴力加害者やその被害者への対応策、児童虐待防止策検討の為の有効な資料を得た。