研究課題
総合研究(A)
第一部で、児童相談所が介入した児童虐待例419例について、性的虐待(35)、身体的虐待のみ(156)、身体的虐待と他の虐待との複合形態(121)、それ以外の虐待一保護の怠慢・拒否、心理的虐待等(107)の四類型に分け分析を試みた。主たる虐待者は、実父29%、継父13%、実母46%、継母6%となっており、95%が親である。それら虐待者の被虐待歴の有無については不明が63.5%を占めるが、判明した者の中では、被虐待歴「あり」が約40%存在する。特に、身体的虐待と他の虐待との複合形態の場合は60%近くが「あり」であった。受けた虐待内容は、身体的虐待の割合が高くなっている。第二部では、三歳以下の乳幼児を持つ一般の母親が虐待もしくは虐待類似行為をどの程度行っているかについて調査した。「たまにある」というものまで含めると、95%移乗の母親が平均して四種類位の虐待(類似)行為を行っている。ただし、日常的に虐待を行っていると考えられるなく及び「時々」に限定してみると、一種類移乗の虐待行為を行っている母親は全体の約半数となる。これらの虐待行為は、攻撃的・かんしゃく待ち等「手のかかる子供の行動が発端になっていることが多いが、母親の余裕のなさやストレスから、子どもの行為に虐待で対応していることも多い。この傾向は、特に、重度の虐待行為を行っている者において顕著である。また、親から可愛がられて育った母親の虐待得点は低く、親から無視されたり、兄弟と差別された体験を持つ母親は虐待得点の高い調査群に多いことが認められた。いわゆる「被害者の加害者化」について或る程度実証できた本研究の成果は高く評価されるであろう。これらの実態を踏まえて、各専門分野から、児童虐待の予防策、救済策を提言することができた。今後、幼ない者に向けられた小さな暴力も看過することができないことをアピールするとともに、社会から暴力を根絶する為に、本調査研究を役立てたいと考えている。