本研究に基づいて平成5年度は企業経営者にアンケートを配布して、企業経営の方針や会社役員に就任するまでの経歴を調査した。平成6年度は特にこのアンケートのコーディグ、そしてアンケートから得られた結果を基にして、各研究者が分析を行なった。アンケートには、会社役員になれた理由や、会社役員になるまでどのような意識で仕事を行なってきたか、会社役員に期待される使命と役割、役員の報酬、等々が細かく記載されているので、そのような課題について、相当詳しい分析が可能であった。さらに、その人の学歴や専攻(理科か文科か)についても情報があるので、社会的に関心の高いテーマに即して、興味のある課題を分析した。それぞれの分析にあたっては、経済理論に忠実であるように心掛け、しかも実証分析に際しては統計的に厳格な手法を用いて、説得力を高めるようにした。 具体的には、誰が役員になるのか、役員の使命として重要なのは何か、役員の報酬は十分かそれとも不十分か、等々の問題を解いて論文をまとめた。その他にも、出身大学による差(名門校かそうでないか)、専攻による差(技術屋か事務屋か)についても詳しいことを調べ、会社役員像というものを明らかにしたものである。 今後の日本企業の経営方針、人事政策の行方を予想する上でも役立つ情報が得られたと確信している。平成7年度は各自の論文を基礎に書物として出版する予定である。 題名:昇進の経済学(東洋経済新報社、近刊)
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