本研究で判明した重要な点は次の数点である。 (1)わが国企業内で昇進を決定する要因は、先ず本人の業績である。次に重要なのは運・上司の引き、学歴等が続くが、何よりも重要なのは重ねて業績である。 (2)日本の年功序列制度は少くとも現在まではうまく作用していたことを、理論的・実証的に説明した。 (3)わが国企業のユ-ポレート・ガバナンスは、労働者自主管理型に近いと評価され、経営者の最大の経営目標は従業員の雇用を守ること、という事実からもそれが支持される。 (4)わが国企業の昇進において学歴(特に卒業大学名)や専攻(理科系か文科系)の違いに注目して、次のことを発見した。すなわち卒業大学名はやや強力な決定要因になっていることと、理科系専攻者よりも文科系専攻者の方が昇進傾向が強く、かつ昇進の確率が高い。 (5)今後のわが国企業における労働者の処遇について次のような政策が望まれる。第一に、賃金と昇進については、より能力・業績主義の方向へもっていくこと。第二に、理科系専門職の優遇等を計ること。第三に、労働者と企業側がキャリアの形成を巡って協調する素地を作ること、等々である。 (6)管理職と専門職の処遇に関して、通念は管理職の賃金は専門職のそれよりも高い方が良いとされていたが、優秀な専門職のインセンティヴを大切にするためには、その通念の打破が必要である。さらに日本の管理職は、非貨幣的支払いを多く受けているので、貨幣的支払いをそう上げなくてよいというのも、これを支持するもう1つの理由になっている。
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