研究課題
第一年次のポスト福祉国家論の検討とそれを通しての各生活領域ごとの問題状況の把握をふまえて、ポスト福祉国家時代の「福祉社会」における「総合生活保障」のあり方を調査研究した。実態調査は主として94年度までに策定された地方老人保健福祉計画の実施状況についての自治体からのヒアリング、そして各自治体における医療、保健、福祉の統合システムのあり方や実情について調査した。また今年度は医療、保健、福祉の統合システムにおいて基軸的な役割を果たしている病院の地域医療や地域看護活動、そして在宅介護活動について調査した。さらに協同組合型の医療活動についても調査した。医療、保健、福祉の統合システムは今後の高齢化社会において不可欠の課題になっているが、その統合システムが官僚化して住民ニーズから乖離したりしないようにするには住民参加がきわめて重要になると思われる。今回調査した長野県厚生連の佐久病院および小諸病院、そして周辺自治体の活動は農村における共同組合型医療機関の積極的な地域医療活動の事例である。また広島県御調町の公立みつぎ病院の保健医療活動も医療、保健、福祉の統合システムの一つの典型である。さらに鹿児島県奄美市の保健福祉活動、そして奄美医療生協の活動も医療、保健、福祉の統合をめざす活動といえる。総じて医療、保健、福祉の統合システムらしきものが具体化しているのは小規模自治体、農村部である。とはいえ、統合システムが一定機能しているのは今の所上からの強力なリーダーシップによるもの言えそうである。住民の自主的な活動と医療、保健、福祉の統合システムがどのように結びついて、柔軟なシステムを形成することができるかは今後の大都市圏での統合システムん成否を左右するものと思われる。以上のような研究成果をふまえて第3年次の研究活動を進める予定である。
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