本研究では、日本の消費者需要システムの推定を行い、良好な結果を得、その結果を“Is Burden of Uniform Taxation Excessive? An Evidence from the Japanese Consumer Demand System 1980-90"という論文にまとめ、1993年の理論計量学会で発表した。 この論文では、財を10種類に分け、地域別センサスデータを中心として、AI需要システムを使い、消費者需要システムの推定を行った。AI需要システムは、効用関数を特定せずパラメーター推定ができる、いわゆるフレキシブルなシステムである。我々の推定結果が経済理論と整合的であったのは、本研究の一つの成果である。また、効用関数に労働供給を入れることにより、レジャーと各財の間のクロス弾力性を得ることができた。したがって、最適税率を求めるシミュレーションも理論的成果と対照することができた。 本研究を進めるにつれて、新たな問題点も明らかになってきた。そのひとつは一般に行われているとはいえ、推定上のテクニックとして価格指数の算出に線型近似が採用され、それとともに最小必要所得を先験的に与えていることである。しかし、本来は非線型システムとして推定すべきものである。財政学の応用という面からみると、貯蓄、資産までをも分析の対象として取り入れたより、多次元の議論が必要であろう。これらの問題点については、今後さらに究明してゆきたい。
|